統合失調症の経験を活かしてカウンセラーになりたい

心理カウンセラーになるには

「以前に統合失調症を体験し克服した今、同じ境遇でつらい思いしている人の役に立ちたいんです」

うつや統合失調症を経験したことがある人は自分の経験を活かし心理カウンセラーを目指す人は少なくありません。ここでは

目次

これらを解説します。

「人の悩みに寄り添いたい。」
「人の助けになりたい。」

私たちにはそんな気持ちがいつもあるのかもしれません。

それはそれは病気などで辛い思いをした人なら、なおさらでしょう。
赤身はれるさん(44歳)もそんな中の1人。

数年前に統合失調症を発症し、辛い症状に苦しみました。
そんな日々、薬物用法と共に支えになったのが、心理士による

『社会技能訓練』
『社会心理療養』

そして現在は寛解(かんかい)に至ります。
(統合失調症の症状がおさまる事を『寛解』と呼びます。)

症状がだいぶ落ち着いてきたころ、自分を担当していた心理カウンセラーが過去にうつ病を克服してきた人だという事を知りました。

自分のうつ病体験から、同じように人から理解されにくい病気に苦しむ人を助けたいと思ったそうです。

通常の生活が送れるようになった赤身さんは、自分もまたかつての担当カウンセラーのように人を助ける仕事がしたいと思うようになります。

一念発起して、カウンセリングを学ぶことにしました。

しかし、統合失調症を経験してきた赤身さんにはむしろ戸惑う事ばかりです―

ここでは、統合失調症を経験した人がカウンセラーを目指すにあたっての有利な点、注意点などについて考えてみましょう。

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統合失調症を克服したカウンセラーは他のカウンセラーと比較して有利に働く部分

同じ病気の辛さや対処が分かる

統合失調症では幻聴や妄想など、人からは理解されにくい症状に苦しむことになります。

それに対する対応も、知識や経験のない人ですと頭ごなしに否定する場合がほとんど。
また少し知識のある人の中には、全肯定してしまいかえって症状を深める場合も。
本来ならば

  • 否定も肯定もせずに耳を傾ける。
  • 耳を傾けながらも受け流す。
  • 受け流しつつ軽く体を動かす方向(簡単な家事・散歩など)に導く

と言った事が大切なのです。
事実、適切な対応をされた統合失調症の患者は気持ちも落ち着き回復も早まります。

統合失調を経験した人は、そういった一連の対処法の飲み込みが早いという利点があります。

同じ病気を持つ人の家族への啓発が出来る

とはいえ、それらは知識のある人の話です。
病気の初期では家族などから、適切な対応を受けられずに苦しむ例(赤身さんも同様でした)が多々あります。

また、家族からの病気への無理解(時には嫌悪感なども)から回復が極端に遅れる例も。

そういった場合、病院からの家族への啓発が必要です。
病気の説明、理解、適切な対処法などを家族に学んでもらうのです。
現実に統合失調症を経験した人でしたら、その理解の切実さが分かります。
そのために、家族への啓発も根気よく行う事が出来るのではないでしょうか。

病気を克服したという事からくる自信がある

統合失調というのは、当人には全く責任の無い所で怒る病気です。
(脳の神経系統の誤作動であり、本人の性格などはほとんど関係ないと言っていいでしょう。)

そして、多くの寛解者やその周囲の人たち(家族・友人など)がいう事が『寛解後は人が変わったようにおだやかで強くなった』という事です。

逆境を乗り越えた経験は人を強くします。
辛い病気を乗り越えた経験は、必ずその後の糧となるでしょう。

私も気持ちは分かるわ

そうね
心の病から目指す人は少なくないわね

統合失調症の人がカウンセラーを目指す点で注意するところ

しかし物事には良い面だけではありません。
統合失調症を克服した人がカウンセラーを目指すにあたり、注意するべきところもあります。

どのような点でしょうか。

自分が受けたカウンセリングの経験が役に立たない

統合失調症の人がカウンセリングを受けるカウンセリングというのは、実は通常の『心の悩み』のカウンセリングとはまったくちがうものです。

すでに述べたように統合失調症というのは、本人の性格(うつ病でいうところの認知の歪みなど)と病気に全く関連性がありません。

統合失調症でカウンセリングを受けた人なら分かるかと思いますが。生活習慣や社会生活の『訓練』を療養という形で受けていたと思います。

しかし通常のカウンセリングというものは

  • クライアント(患者)の話を共感をもって聞く
  • クライアントが自分から問題を解決できるような『気づき』へと導く
  • 『気づき』への導きのための言葉がけ

というようなものが基本となります。

統合失調症を克服した経験があればカウンセリングの勉強にもきっと取り組めるとは思います。

しかし、自分の病気の経験が勉強の役には立たないという事は事前に知っておいたほうが良いでしょう。

クライアントからの『感情転移』に注意する

カウンセリングの現場で良く起こることに、クライアントからカウンセラーへの『感情移転』というものがあります。

これはクライアントがそれまでの成育歴で無理に抑えていた気持ちを、カウンセラーに投影する現象です。

(主に親などの保護者に)甘えたかったけど甘えられなかった。あるいは虐待家庭などの場合は怒りたかったけど怒れなかった。

相違いった無理に抑え込んでいた強い気持ちは、そう簡単に消えることなくクライアントの無意識に息づき続けています。

カウンセリングが進むと、クライアントの無意識からそういった『それまで抑え込んでいた感情』が表出してくるのです。

表出した感情は主にカウンセラーに投影されます。

  • カウンセラーを現実以上に美化し尊敬する。
  • カウンセラーに子供のように甘えようとする。

または

  • カウンセラーに突然敵意むき出しに突っかかる

などが感情転移です。

統合失調症でのカウンセリングでは、まず怒らない現象であるために非常に戸惑うかと思います。

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『感情転移』対する望ましい対応

この感情転移は、統合失調症でいうところの幻聴や妄想だととらえましょう。
否定も肯定もせずに構えていると、クライアントは自然と落ち着いて行きます。
(無意識の感情を吐き出す事で、自分をコントロールできるようになるのです。)

この感情転移が起こった場合、カウンセラーがとってはいけない行動は主に次の3つです。

  • 真に受けて悩む、自分を責める。
  • 転移された感情がネガティブなものだった場合に自分のどこに不満があるのか話し合って解決しようとする。
    (これは、はっきり言って無駄ですし、問題がこじれるだけです)
  • 転移された感情が極端な美化や甘えだった場合にクライアントの期待の応えようとしてしまう。
    (こういった転移感情も、いずれは落ち着きます。

カウンセラーの仕事はクライアントの期待に応える事ではなく、共感を持ちながらも一定の距離ともって接する事です。)

こうしてカウンセラーが落ち着いて接していると、クライアントもまたやがて落ち着いて行くでしょう。

本文で何度も述べましたが、統合失調症の人にとってのカウンセリングは、通常のカウンセリングとまったくちがうタイプのものです。

そういう意味では、病気の経験というのは同じ病気の人相手でないと役に立たない可能性があります。
しかし、病気を乗り越えたという経験そのものは必ず役に立つはずです。
つらかった病気の経験があるからこそ、分かる痛みがあるはず。
その経験を、いま苦しんでいる人のために役立ててほしいと願っています。

心理カウンセラーになるには